本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日・お題「ベンチ」

公園のベンチでパピコを分け合った夜に初めて繋いだ手と手

 

 この歌は、時期的にパピコにしたけれど、本当は不二家のルックチョコレートだった。

 私は、母ととても仲がよく、母との間には秘密が何もないので、恋愛のことでもなんでも話しているのだが、24歳の時に好きになった人が当時警察学校にいて、その卒業を待って2度目のデートを上野動物園ですることになり、それを母に報告したら、

「デートの時にふたりで食べなさい♪」

と、小包の中に不二家のルックチョコレートを入れて送ってくれたのだ。

 動物園の後、上野公園に寄って、私たちは、ベンチに座ってルックチョコレートを半分ずつ食べた。

 その日の帰り、駅のホームに上るエスカレーターで、彼が私の耳元に近寄って

「手を繋いでもいい?」

と、訊いた。私は、嬉しいのと、ドキドキしたのとでその場で頷きながら号泣してしまって、彼を困らせた。

 でも、そのくらい、好きな人と手を繋ぐというのは私にとっては特別なことで、職に就いて親の脛をかじらなくなるまでは恋愛はしないと決めていた学生時代を送った私には初めての経験だったから、手を握られた瞬間に涙がどんどん溢れてきて止まらなくなってしまったのである。

 そして、私たちは恋人になった。29歳でお別れの時が来るまで、ずっとずっと大好きな人だった。