本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日・お題「蒸」

死ぬ前に食べたい母の茶碗蒸し 十年ぶりに実家へ帰る

 

 

 最期の晩餐に何が食べたいかと訊かれたら、迷わず母が作った茶碗蒸しだと答える。

 いろんな和食料理屋さんやお寿司屋さんや旅館などで茶碗蒸しを食べる機会があったけれど、母の茶碗蒸しを超える茶碗蒸しとはまだ出会えていない。

 母の茶碗蒸しは具沢山で、海老、鶏肉、蒲鉾、銀杏、干し椎茸、ほうれん草が入っている。蒸し加減も最高でとろっとろ。どんなに食欲がない時でも、母の茶碗蒸しなら食べられるし、父なんて母の茶碗蒸しが好きすぎて自分の分だけ4つも作らせる。最近は、4つ作るのが面倒になった母が、父の分だけ丼で作っているそうだ。

 母は、家庭科の教科書で習った通りに作っているだけだというから、教科書、すごい。

 

 でも、私が病気になってしまったから、もう実家へは11年帰れてなくて、母の茶碗蒸しもずっと食べていない。ひょっとしたら、もう食べられないかもしれない。もう一度母の茶碗蒸しを食べたいなあという願望を込めて詠んだ。