本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日・お題「掃」

汲み取りの清掃業者にお辞儀して冷えた麦茶でおもてなしする

 

 これは、お題を見た瞬間に昨日の祖母の歌から生まれたもうひとつの歌である。

 長い間、私の実家の借家は汲み取り式のトイレであった。定期的に、汲み取りの清掃業者の方がいらして私たち家族の尿や便を収集してくださっていた。

 祖母は、たまに我が家にも泊まりに来ていたのだが、清掃業者の方がいらっしゃると深々とお辞儀をしてお茶を出していた。そして、彼らが帰ると私にこう言った。

「世の中にはなかなか人がやりたがらないきつい仕事をされちょる人たちがおる。そういう人たちに感謝して、大事にせんといかんとよ」

と。

 祖母は家の仕事を手伝うために小学校も満足に通わせてもらえない苦労人だったこともあり、とにかく、人に対して優しく、自分が受けた恩は絶対に忘れず、礼を尽くす人だった。

 この人の孫に生まれてくることができたのは、とても幸せなことだったなと思う。