本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

回文短歌

遠く陽を見ながら時空閉ざすキス ザトウクジラが波をひく音
(とおくひをみながらじくうとざすきすざとうくじらがなみをひくおと)

 

 これは、2016年7月29日にTwitterで浅井さんという方が発表された回文短歌である。

 浅井さんの回文短歌を読むようになってから、私は、積極的には回文短歌を作ろうとはしなくなったし、自分のは回文短歌ではなくて短歌調回文だなと思うようになった。

 浅井さんの回文短歌は、回文を作りやすい単語(既に有名な回文になってる単語)はあまり使われていない。そして、清濁変換もなくて読みやすくすっと入ってくるし、情景が写真を見ているように思い浮かぶ。この回文短歌を初めて見た時に、ザトウクジラで回す人がいたことに驚いたし、ここから、時空閉ざすキスという壮大でロマンティックな言葉を見つけられたことに心から感激した。

 昨日のうたの日はお題が「回文」のお部屋があって、私もずっと短歌調回文を考えていたのだが、納得のいくレベルのものがひとつもできなかったので、当初の予定通り「電車」のお部屋にいることにしたのだが、正解だったなと思う。

 短歌調の回文は回文になっているというだけで内容に不自然なところがあっても甘く評価されがちなので、それが回文のためにも短歌のためにも本人のためにもいいことだとは到底思えないからだ。

 確かに、短歌調の回文を作るのはとても難しいのだけど、普通の回文ならできるだけ日本語として自然で意味の通った回文を目指そうとするのに、短歌調回文になると自分に甘くなるのが私は許せないのだ。

 その短歌調回文を、回文と知らずに読んだ時に短歌としても感動できるかどうか。そうなって初めて回文短歌と呼んでいい気がしている。