本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

今日の自由詠

次々と大事なものを盗る人の不倫の歌は妙にリアルで

 

 私の歌は、9割は事実で、主体は私であることが多いのだけど、自分の経験していないことは基本的には歌にしないし、空想を歌にする技術もないと思う。

 今もこれからも私が絶対にやらないだろうなと思うのは不倫詠だ。それは、私が家庭のある人を、しかも、その家庭を裏切るのが平気な人を好きになる可能性がないからだ。特に子供のいる人を好きになることは絶対に有り得ない。

 また、わざわざ私が空想で不倫の歌を詠んだって、幸せな気持ちになる読者はいないだろう。不愉快にさせることはあっても。

 以前、うたの日でお題が不倫だった時は、不倫されてた側の祖母の気持ちで詠んだ。それが私の唯一の不倫詠である。

 私の祖母は、家庭があった祖母の父と祖母の母が不倫した末に生まれた子供で、でも、祖母の母が身体が弱くて子育てができないということで、4歳で里子に出された。祖母は、おばあちゃんになってもずっと、本当の両親を恋しがって泣いていた。大人の勝手な都合で傷つくのはいつだって子供だ。

 そして、祖母は、祖父が女遊びが激しい人だったからずいぶん泣かされた。それでも、離婚しなかったのは、母たち8人の子供のためだったし、何より、不倫されてもなお、祖母は祖父を愛していた。

 実の両親の愛を求め、祖父の愛を求め、ひたすら哀しみに耐えた祖母のことを思うと、自分が不倫をすることなど絶対にあってはならないと思うのだ。

 でも、他人が不倫詠をするのは別に構わないし、上手な短歌だとおおっ!と思う。そして、さすがに、実体験なのかどうかは聞かないようにする。聞いて、内容が真実だとわかった瞬間に、私はその人のことをどんなにいい短歌を詠む人だったとしても、軽蔑してしまうだろうと思うからだ。

 そういえば、私を絶望のどん底に突き落とした人は不倫詠の名手だったな……なんて思い出してしまった。