うたの日・お題「戦争」
弾丸は祖父の頭上をすり抜けた敵のうんこに滑ってこけて
祖父は戦時中は中国にいたんだけど、この話が実話なのか祖父の冗談なのかはわからないが、敵のうんこに滑ってこけたおかげで、銃弾に当たらず命拾いをしたのだという話を、母の兄たちは聞かされたらしい。
祖父は、末っ子の母には戦争の話をしたことがないという。
だが、祖父は、戦後、自分が中国でいかに残虐な行為をしてきたかを祖母に告白し
「俺には子供たちの父親の資格はないから、離婚してくれ」
と涙を流したそうだ。祖母は、
「子供たちには父親が必要だ」
と言って、祖父を受け入れた。祖父の罪ごと。
だから、祖父のこのうんこに滑った話を思い出すたびに、祖父の背負っていた罪の意識や心の傷を想像して胸が痛くなるのだ。