本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

今日の自由詠

ゴキブリをためらいもなく殺すのに死体を探すことができない

 

 夏の間は、どうしても、部屋の中でゴキブリを数回見かける。

 殺虫剤をシューッと噴霧するところまではいいのだが、ゴキブリは年々殺虫剤に耐性がついているらしく、なかなか効かずにずっと部屋中を動き回る。そして、部屋のどこかでピタッと動きが止まるのだが、私は、生きたゴキブリよりも、死んだゴキブリの方が怖い。

 これは、たぶん、少女時代のトラウマで、弟が、虫かごいっぱいに虫を捕まえてくるまではいいのだが、世話をせず放置して、大量に虫が死んでしまうのを見ていたせいだと思う。私は、虫は、蝶やてんとう虫であっても可愛いとは思えないタイプなので、私が弟の代わりに世話をしようという発想もなく、見殺しにしていたのである。

 せめて、部屋が綺麗に整理整頓されていれば、すぐにゴキブリの死体も見つかるのであろうが、私は、うつ病になって以来、掃除機もどこにあるのかわからないほど散らかった汚い部屋に住んでいるのに掃除も整理整頓もできないため、ゴキブリの死体を見つけるだけのために片付けをするという気にもなれず、部屋の隅の方に転がっている数匹のゴキブリの死体と共同生活を送っている状況である。

 こんな時、思い出すのが『のだめカンタービレ』のヒロインのだめこと野田恵ちゃんの汚部屋なのだが、彼女には特別なピアノの才能があったし、可愛い女子大生だったから救いがあったし、何より、彼女の部屋を綺麗に掃除して整理整頓して手料理まで作ってくれる千秋真一先輩という存在がいたから良い話だったけれど、何の取り柄もない40歳無職で未婚で恋人もいない私がこんな汚部屋に住んでいるのは、ホラーでしかない。

 主治医からはヘルパーさんに来てもらうようにと言われているんだけれど、そんなお金もないし、ずっと汚部屋のままなのである。

 病気が寛解して自力で掃除できるようになるのが早いか、宝くじが当たって業者さんを呼ぶのが早いかはわからないが、当分、ゴキブリの死体との共同生活は続く……