本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

月の下歌会


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 今日、乃木坂でたんぽぽさんとお別れした後は、青山一丁目にあるNHK文化センター青山教室へ向かった。

 先日、『NHK短歌』のプレゼントコーナーで当選した栗木京子先生と東直子先生をお迎えして開催される「月の下歌会」に参加するためだ。

 前半の1時間は、栗木先生と東先生がそれぞれ影響を受けたお歌と自選3首について講演してくださるというもの。とても勉強になる素晴らしいお話しがたくさん聴けたのだけど、特に気になったのが、東先生が影響を受けたお歌として紹介された

 

手のなかに鳩をつつみてはなちやるたのしさ春夜投函にゆく 小池純代『雅族』

 

というお歌で、一目見て理屈抜きに好きだなあ!と思ったのだけど、そこで、栗木先生が一言

「小池純代さんはね、上から読んでも下から読んでも同じ文になる回文も作られるのよ」

とおっしゃって、おお!っと思った。けっこう、歌人で回文を作られる方はいらっしゃるのだなあ。

 

 後半の1時間は、お題「りんご」で、歌会。全部で23首の詠草が集まっていて、私は、4首作った中から、Twitterの純粋読者のフォロワーさんに

「どれが好きですか?」

と訊いて、選んでいただいた

 

シャンシャンがりんごを食べたニュースだけ読んでスマホの電源を切る

 

という歌を出した。

 先生方がそれぞれ5首選ばれて評を述べられたんだけど、なんと、私の歌を栗木先生が選んでくださって、東先生も

「私もとても気になった歌でした」

と言ってくださり、特に欠点を指摘されることもなく、ずっと褒めてくださった。

 具体的には、

スマホでは、ゲームをしたりもできたりするが、シャンシャンのニュースだけを読むというところに、作者の節度を感じて好感が持てる。(栗木先生)

・辛いニュースは読みたくないという心理があると思う。電源まで切るというところに、重さがある。(東先生)

・確かに、重い。もしかして、主体は、メールを受けとりたくない相手がいたりして、下界と繋がりたくないのだろうか。(栗木先生)

・シャンシャン、ニュース、スマホというカタカナの多用が面白く、シャンシャンがりんごをかじっているオノマトペのようにも見えて面白い。(東先生)

・シャンシャンがりんごを食べたというニュースは2018年の今の時期だけのもので、来年にはニュースにならないからタイムリー。(栗木先生)

・りんごでパンダを詠むというところが面白い。(東先生)

と、とても丁寧に、私がこの歌で表現したかったことや、シャンシャンは来年には中国に行っちゃうから詠むなら今だなと思って詠んだことまで読み取っていただけて、とても感激した。

 選を入れなかったお歌についても、どこが良くて何が足りないのか、ここはこうしたらもっと良い短歌になるというアドバイスを具体的にされていて、とても勉強になったし、プロの歌人というのは、一見、歌意の読み取れない短歌でもこんなに深く読んでくださるのか!と、感心したのだった。でも、決して、その短歌の作者が傷つくようなことは言わず、どの評もとても温かかった。素晴らしい短歌を詠まれる方は、評も素敵なのだなと改めて実感したのであった。