本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

父、張り切る

 私の父は、6~7年前に胃癌になり、胃の全摘出手術を受けた。

 手術は成功したのだが、胃がなくて、ビタミンB12が不足している影響なのかはわからないけど、父は、自分の身体から異臭がしていて、全身が脂でベトベトしていると思い込むようになった。

 そのため、ほとんど外出しないようになり、弟夫婦の結婚式にも、自分が臭いから周囲に迷惑をかけると言って譲らず、母だけが上京して出席したほど、ひきこもり状態なのである。

 そんな父が、私が11月に帰省すると母から聴くなりとても喜んで、

「その頃なら、俺も運転する元気が出てるかもしれんから、どこか温泉にでも1泊しよう」

と言い出したらしい。

 父と私の関係は複雑で、私は、3歳から父に精神的虐待と身体的虐待を受けていたのだが、父本人は躾だと思っていて

「直美にはいっぱい手をあげたが、その分、心の優しい素直な娘に育ってくれた。俺は直美がいちばん可愛い」

と周囲に語るほど私を溺愛しているのである。私には一生消えないトラウマなのだけど、本人に悪気がないから諦めていて、父の前ではいい娘を演じるようにしている。

 父も病気で弱ってるから、父には私の病気のことは家族で隠し通してるし、今回の自殺未遂のことも父には伝えていない。もし、それを知れば、父はとてもショックを受け、私を呼び戻し、監禁しかねないからだ。

 でも、あんなに外出するのを嫌がっていた父が温泉に行きたがるなんて、すごい前進である。これも、弟が、私に飛行機のチケットを買ってくれたからだから、弟に感謝しなくては。