本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

今日の自由詠

いつの日か君が孤独になった時だけでもいいの思い出してね

 たぶん、私の好きな人は、生まれてから一度も孤独になったことがない。
 温かい家庭で素敵なご両親とご兄弟に囲まれて、名門校で一流の教育を受けて何不自由なく育って、お家から出たことがない人だから。
 でも、いつか、彼のご両親も亡くなる時が来るし、妹さんだって結婚してご実家を出ていかれるだろう。
 彼は、友達と呼ぶ人もすごく限られていて、一緒に食事をしたり遊んだりしたくらいの人を友達とは呼んでくれない人だ。とても優しい人ではあるけれど、他人には本心を見せずに壁を作ろうとする。
 でも、私は、こんな彼のことが愛おしくて仕方がないのだ。彼は、ぜんぜん私のことなんか相手にしてくれなくても。
 今は、私のことを全く必要としてくれてなくても、もしも、彼がおじいさんになって、老後が淋しくなった時にでも、ふと、昔、自分のことを一方的に好きだと言ってた人がいたなあ……なんて、私を思い出してくれたらいいのにと思う。きっと、私はおばあさんになっても相変わらず想い出の中の彼のことだけを想っていて、彼が呼んでくれたら、地球上のどこにいたって、一目散に彼のもとへと駆けつける。
 まあ、彼ほどの人なら、その頃は、彼にふさわしい素晴らしい女性と結婚しててお孫さんもいたりして、孤独な老後なんて送ってないとは思うんだけど。