本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日・お題「蕎麦」

ひとりきり年越し蕎麦を食べながらうどん屋ばかりの故郷を想う

 宮崎から東京に来て気付いたことなのだが、宮崎はうどん県だったのだなあ、ということだ。
 街にうどん屋はたくさんあるのだが、蕎麦屋の看板を掲げてる店はあまりない。そういえば、子供の頃から、蕎麦は外食では食べず、母の作った年越し蕎麦を食べるくらいしか食べる機会もなかった気がする。
 そして、私は、大学に入って香川出身の子にお土産の讃岐うどんをもらうまで、うどんが苦手だった。母は、うどんが好きでよく家でも作っていたり、伯母なんかは手打ちうどんを振る舞ってくれたりしたのだが、どのうどんを食べても美味しいと思ったことがなかった。でも、焼きうどんや、きしめんは好きというわがまま味覚だった。
 たぶん、宮崎のうどんは、麺が柔らかくてコシがないからだった苦手だっのかなあ、と今は思っている。

 私は、年越し蕎麦というのがとても好きで、毎年、ひとりだけどおかわりして食べる。いつもよりちょっといい蕎麦を買って、お惣菜コーナーで立派な海老の天ぷらと海老のかき揚げを買って、お肉コーナーで鴨肉を買う。1杯目は天ぷら蕎麦、2杯目は鴨南蛮にする。
 今日も年越し蕎麦を食べながら、もし、9月に死んでいたら、当たり前だけどこうして年越しはできなかったし、家族もお正月を迎えることはできなかったのだなあ……なんて思った。
 でも、私は、こうして生きていて、ちゃんと食べて、ちゃんと眠れている。今もまだ哀しみは消えないけど、いつか、時が解決してくれるのを待とう。私には私を必要だと言ってくれる人たちもいて、短歌もあるのだから。