本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

昨日の自由詠

夏休みプールサイドでどん兵衛を食べる子たちを見ないふりした

 子供の頃、家の近所に、のぞみ荘という名前のプールがあった。
 深さのある大きなプールと子供用の小さなプールがあって、夏は、いつも、子供たちや家族連れでいっぱいだった。
 私たちもよくのぞみ荘に遊びに行ったが、食いしん坊な私は、プールで泳いだ後に、プールサイドでどん兵衛を食べている子たちがすごく気になって仕方なかった。たくさん泳いで冷えきった身体で食べる温かいどん兵衛は、どんなに美味しいだろう。
 でも、私の家は、とても貧乏だったし、私は、高校を卒業するまで1ヶ月のおこづかいは1000円だったから、自分でどん兵衛を買うのはもったいなかったし、かといって、母にどん兵衛が食べたいと言うこともできず、結局、一度も、のぞみ荘でどん兵衛を食べることはなかった。
 この前、宮崎に帰省した時、のぞみ荘はなくなってしまったことを知った。こうして、想い出の場所がまたひとつ消えてしまったことが淋しかったけど、どん兵衛を美味しそうに食べていた子たちの表情は今でも忘れられない。