うたの日・お題「臨」
散りぎわの桜のように最期まで感謝を述べた祖父の臨終
松たか子ちゃんの「桜の雨、いつか」という曲を聴いたり歌ったりするたびに、ああ、この曲はじいちゃんのテーマソングだなあと思うんだけど、私の祖父は、私が5歳の4月に亡くなった。
祖父危篤の知らせを聞いて、母と生後10か月の妹だけが京都から宮崎に飛んだ。
それまで意識のなかった祖父は、ふと、目覚め、妹を身体の上に乗せて遊ばせながら、集まった親族ひとりひとりに言葉をかけたのだと言う。8人兄弟の末っ子の母には
「ばあちゃんは知子に頼む」
と。そして、選挙の時にお世話になった町役場の人にまでお礼の言葉を述べたのだそうだ。
でも、当時、祖母に対して嫌がらせをしていた次男の嫁にだけは
「ノリヨはノリヨ」
という意味深な言葉をかけて、祖父は息を引き取ったのだった。
それからわずか3か月後に妹が事故死したのだが、
「じいちゃんが淋しくていちばん可愛い孫を連れていったのかね……」
なんて話してたこともあるが、祖父は、いい人であった。