本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日の100人の短歌・第1グループ③日向彼方さん

 日向彼方さん、おかえりなさい!今はうたの日を離れられていても、ずっと短歌を続けていらっしゃって、各所でご活躍されてるのが嬉しいです。先日は、第三十三回全国短歌フォーラムin塩尻自由詠で優秀賞、題詠「駅」で奨励賞を受賞されて、すごく素敵なお歌でした。
 そんな彼方さんのうたの日のお歌で特に好きなのがこちらです。
 

母さんが肩たたき券10枚も貯め込んでいて100分コース/日向彼方 2018年11月14日お題「肩」

 私は、家族詠がとても好きなんですけど、このお歌は、たくさんある家族詠の中でも特にいいなあと思うお歌の中の1首でもあります。
 肩たたき券って、まだ、あまりお小遣いをもらえない小学生の子が、なんとか知恵を絞って心のこもったお金のかからないプレゼントを親や祖父母にしようと思った時に贈るプレゼントの代表的なものです。
 この主体は、母の日か、誕生日にでも肩たたき券をお母さんに贈ったのでしょうか。おそらく、毎年。主体の手作りの肩たたき券を大切にずっと取っているお母さんの我が子への愛情にも胸が熱くなりますし、小学校1年生から毎年肩たたき券を1枚お母さんに贈ったと単純計算した時に、今、この主体は16~17歳くらいかなと思うのですが、思春期には、お母さんに反抗したり、ちょっと距離を置いたりしたこともあったのではないだろうかと想像できます。高校を卒業したら就職か進学で親元を離れることもあるかもしれない。そんな時に、お母さんは、ずっと大切に取っておいた肩たたき券を使うのです。1枚で10分の券を、10枚も。
 100分間、もうすぐ大人になろうとしている主体から肩を叩いてもらいながら、いろいろな話をゆっくりできるだろうし、主体を産んでから毎日大切に育ててきた日々のことを振り返ったりして、この日のことを一生忘れないのではないかと思います。
 母と子の両方の愛情が伝わってくるお歌です。