本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日の100人の短歌・第2グループ①千仗千紘さん

 千仗千紘さんもわりと新しい方で、俳句もされているからなのか、短歌も、余計なものはなるべく削ぎ落として詠んでいらっしゃる気がしていて、私がずっと悩んでいる短歌のドーナツの穴の適度な大きさを、もう、完全に掴んでいらっしゃるように感じるお歌が多いです。


「丁寧な暮らし」のためにいくらかの個性が今日も捨てられている/千仗千紘 2019年5月21日お題「丁寧」

 このお歌、誰が「丁寧な暮らし」をしているのかということは明らかにはされていないのですが、おそらく、主体は、InstagramTwitterやブログなどで、自称「丁寧な暮らし」をしている人たちを眺めているのではないだろうか?と思いました。
 たぶん、「丁寧な暮らし」をしようとする人って、出産して育児をすることになった女性に多いのではないかと思うんです。土鍋でご飯を炊いたり、天然酵母の自家製パンを焼いたり、手打ちのうどんや蕎麦を作ったり、自分のスカートや子供の洋服を手作りしたり、手間をかけた暮らしをしているように想像します。でも、そんな生活をするには、外で働くことは厳しいだろうし、独身時代のように友達と飲みにゆくということも激減するだろうし、睡眠時間も削らないといけないかもしれないし、趣味のひとつやふたつも諦めないといけないのかもしれない。
 そういう、自分が犠牲にしていることには触れずに「丁寧な暮らし」として自分の暮らしぶりをネットで伝えている人たちを、主体は、個性が捨てられていると感じて、ちょっと冷めた目で見ているのではないでしょうか。自分には真似できないし、真似したくないと思いながら。