本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日の100人の短歌・第2グループ⑦池田輔さん

 中学生や高校生で短歌を詠んでいる人たちのお歌はすごくキラキラしていて、私も、若い頃に短歌を始めていたらこんなに輝いている歌を詠むことができたかな?なんて思って数秒後に、いや、私の中高生時代は暗黒時代だったから、この子たちのような素敵な短歌を詠むのは絶対に無理だったな……と思い直すことがあるのですが、池田輔さんのお歌も、私にはすごく眩しいです。


イヤホンが私と君の動脈で他の全てはどうだっていい/池田輔 2019年6月8日お題「他」

 これは、恋人、もしくは友達以上恋人未満の君と、ひとつのイヤホンのLとRを分け合って同じ音楽を聴いているところだと思うんだけど、イヤホンを動脈と表現した大胆さに目が釘付けになりました。ただ、イヤホンを分け合っているというだけなのに、すごく官能的に見えたからです。キスをしたとか、セックスをしたなんていうよりずっと、生々しくて、ドキッとしました。
 さらにドキッとさせられたのが下の句で、完全に、今、ふたりはふたりだけの世界に生きていて、ふたりで一緒にいること以上に大切なことなんて何もないと思っているようです。私と君がふたりでいられさえすれば、学校も、友達も、家族も、将来も、どうでもいいと断言できる、怖いものなどない若さ。
 中村あゆみさんの『翼の折れたエンジェル』という名曲があるんですけど、あの歌も、13歳で出会ったふたりの10代の恋愛模様を描いているんですが、わずか31音の短歌で誰にも邪魔することができない若いふたりだけの世界を詠みきっていることに感心しました。