本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日の100人の短歌・第3グループ②エノモトユミ(榎本ユミ)さん

 榎本ユミさんは、短歌歴1年だということなんだけど、うたの日を始めいろいろな場でご活躍されているのをお見かけしていて、あまり新人さんという感じがしない、どっしりとした存在感のあるお歌を詠まれる方だなと思っています。今年の7月には塔短歌会にも入会されたそうで、ますます研鑽を積まれて素敵なお歌を詠まれてゆくことでしょう。
 榎本さんのお歌は、東京を舞台にしたものがすごく魅力的だったり、恋のお歌も素敵なものが多くて、好きなお歌だらけなんですけど、特に心を揺さぶられた1首について書きます。


不確かな人生だって味噌汁にうつる朝日を飲む君がいる/エノモトユミ 2019年1月18日お題「確」


 おそらく、主体は女性で、その夫との朝食の場面だと思います。
 よく、結婚式の時に、牧師さんが新郎新婦に
「あなたは、病める時も、健やかなる時も、
富める時も、貧しき時も、……」
と、生涯相手を愛するかどうか誓いの言葉を言わせる場面がありますが、それを思い出させるお歌だなと思いました。
 具体的に不確かな人生というのが何を指しているかはここではあきらかにはされていません。例えば、病気になって仕事を辞めなくてはいけなくなったとか、何か辛いことがあったのかもしれません。でも、どんな時でも一緒にご飯を食べて、乗り越えてゆく。味噌汁は、よく、プロポーズの言葉にも
「僕に毎朝あなたの味噌汁を作ってください」
なんていうものがあるように、和食中心の家庭なら毎日でも食べる機会があり、その家の味がある特別な料理の代表格です。それだけでも深い意味のある味噌汁にうつる朝日を描写したところが、すごいところだと思います。このお題で、確かなものではなく不確かな人生を詠んだと最初に思わせておいて、朝が来たら晴れの日には確実に見える朝日はこの夫婦にとっての希望だし、どんな時でも君に味噌汁を作るんだという主体の揺るぎない覚悟と、君さえ隣にいてくれたら幸せなのだという想いの込もったお歌だと思いました。