本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日の100人の短歌・第3グループ④モカブレンドさん

 モカブレンドさんも、まだ短歌歴1年経っていないくらいの方なんだけれど、うたの日では私の好きなお歌をよく詠まれていて、何回も感想を書いてきたように思います。特に、食べ物や飲み物のお歌に共感するものが多くて、モカブレンドさんと一緒にお酒を飲んだら楽しそうだななんて思うことがたまにあります。また、#今日は何の日 の短歌も毎日詠まれているようで、面白い試みだなと思っています。


刺し盛りのなんの魚かわからない白身と一緒に愚痴を聞いてる/モカブレンド 2019年2月8日お題「刺身」


 よく誰かの短歌を読んでいて、私が今まで上手く言語化できなかった現象を短歌にしてくれてありがとうございます!って言いたくなる作品と出合うことがあると思うんだけど、このお歌もそうです。
 魚の名前って、釣りをして自分で魚を捌く人とか、魚屋さんとか、お寿司屋さんとか、魚のプロでないと何の魚なのかよく知らないってことがたまにあります。特に、白身魚はそういう場合がけっこうあるなあということを、このお歌を読んで改めて気付かされました。
 すごく面白いのは、この名前のわからない白身魚の刺身の擬人化です。愚痴を聞かされる飲み会ってうんざりしてなかなか箸も進まないものです。白身魚でも、鯛とかヒラメとか何の魚かはっきりわかっているものなら人気もあって誰かが食べてしまうだろうけど、この白身魚には箸がつけられていないのでしょう。だから、主体と一緒に聞きたくもない愚痴を聞くことになる。
 このお歌の中でいちばん可哀想なのは、愚痴を聞いているだけの主体ではなくて、刺身にされたのに自分の名前さえ知られないまま食べられることもなく愚痴を聞いている白身魚であるのも面白く、まさに、お題である「刺身」が真の主人公になっているところが好きです。