本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日の100人の短歌・第3グループ⑤青山祐己さん

 青山祐己さんは、ピアノで弾き語りをされるシンガーソングライターでもあり、横浜市の藤が丘で風凛歌(ふうりんか)という名前の日本酒をメインにしたとても素敵なライブバーを経営されている方です。このお店が本当に居心地が良くて、おつまみまでもちこみできるお店なので、お酒を飲みながらの歌会など、短歌のイベントもできたらいいなあと思っています。
 青山さんの短歌は、作詞もされる方だからなのかもしれないけれど、心をギュッと掴んで離さないお歌が多くて、うたの日でご一緒した時はハートを捧げることも多いんですけど、今日ここで引かせていただくのは、魂が揺さぶられて思わず泣いてしまった1首です。


今晩のカレーは美味くできたから明日はもっと美味いぜ。死ぬなよ。/青山祐己 2019年2月6日「自殺したい人へ送る歌」


 私は今までに4回自殺未遂をしたことがあるのですが、頭ごなしに死にたい気持ちを否定されて「馬鹿」と言われたりしてさらに傷ついてますます死ぬしかないと思い詰めていったんですけど、もし、当時の私がこのお歌に出合えていたら、自分の意志で自殺をやめることができただろうなと思いました。
 自殺をしたい人は、今にも明日にも希望がないから自殺をしたいのだということが、この主体にはとてもよくわかっていると思うのです。ひょっとしたら、主体も死にたいと思い悩んだことがあるのかもしれません。
 そんな時に、美味しくできたカレーをもっと美味しくなっている明日に一緒に食べようと誘ってくれる。食べることは生きることです。ひとりで食べるごはんは美味しくないこともあるけれど、自分のことを大切に思ってくれている人と一緒に食べるごはんは、元気を与えてくれます。それも、その人が自分を思って作ってくれたごはんなら、もっと力になるでしょう。
 カレーは2日目の方が美味しいという定説をさりげなく上手に詠み込んで、死にたい人が明日も生きようと思えるお歌にしたところ、最後の死ぬなよ。という命令形もすごく優しく包み込んでくれるように感じられるところがいいなあと思います。
 そして、もし、自分の大切な人が死にたいと悩んでいる時、真っ先にこのお歌のことを思い出して、その人とごはんの約束をしようとすると思うんです。一生忘れることのないお歌だと思います。