本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日の100人の短歌・第3グループ⑥中嶋港人さん

 うたの日にいると、よく、またものすごい新人さんが現れた!と思う人との出会いがあるけれど、中嶋港人さんもそんなひとりです。
 同じお部屋になった時は、思わず、ハートを捧げてしまうお歌を詠む人がいますが、今、私がいちばん多くハートを捧げてるのは中嶋さんです。
 というわけで、中嶋さんのお歌には、今まで何度も何度も感想を書いてきたのですが、今回は、私とは別のお部屋で詠まれていたお歌で好きすぎるお歌があったので引かせていただきます。それも、2首。


しんどいを伝える相手がいないのでいつも元気なことにされてる/中嶋港人 2019年2月10日お題「自由詠」


 うたの日では毎月10日は自由詠の日なんだけど、お題が自由なのにこのお歌を出されてきたことに、思わず、大丈夫?!と心配になりました。
 本当はしんどいのに、それを誰にも言わないでひとりで抱え込んでいる主体。下の句でいつも元気なことにされてるということは、主体は、決して、孤立しているというわけではないのでしょう。きっと、表面的には誰とでも上手くやっていて、元気で明るい人だと思われているのだと思います。
 しんどさを誰にも伝えないのは、たぶん、主体がものすごく人に対して気を遣うからなのではないかなと推測しました。しんどいと伝えることによって、その相手にも自分のしんどさを分けてしまうから。だから、誰にも言わずに元気そうな自分を演じてしまうのではないか。それが確信に変わったのが次の1首です。


きみのプロなので膨れっ面しても5秒で笑わすことができます/中嶋港人 2019年3月4日お題「プロ」


 このお題で真っ先にきみのプロだと断言できるくらいにきみへの愛に溢れている主体。主体は、膨れっ面をしているきみでさえ愛していて、5秒で笑わすことができると言い切っています。一体、たったの5秒でどうやって怒っていた人を笑わせるのかはわからないけれど、主体は、きみと一緒になって怒ったりはせずに、笑わせようとする人なのです。だって、その方が楽しいから。主体は、きみに対して何かを求めるのではなく、自分がきみに対して何ができるのかを考えるより先に身体が動いてしまう人なのではないでしょうか。大切な人の笑顔こそが、主体にとっていちばんの喜びなのでしょう。
 
 ここで、最初のお歌に戻りますが、主体は、そんな親密なきみにさえも、自分のしんどさは伝えないようにしているのだと思います。そこには、主体の深い愛情も感じるのですが、同じくらい深い愛情で自分が包まれることは期待していないような気がして、淋しさも感じるのです。大切な人のことは笑顔にするけれど、この主体が心から笑顔になることはあるのだろうか?あってほしいと願わずにいられないから、私は中嶋港人さんのお歌に惹き付けられるのだと思います。