本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日の100人の短歌・第3グループ⑧シュンイチ(貝澤駿一)さん

 シュンイチさんの短歌への感想を書くのはとても緊張します。何故なら、私がこれまで何回か参加してきたリアル歌会で、いちばん素敵な評をされる人がシュンイチさんこと貝澤駿一さんで、こういう深い読み方のできる人になりたいと目標にしている人だからです。
 シュンイチさんは英語の先生でもあり、歌集だけではなくて英米文学の知識も豊富な文学青年なのですが、昔の音楽もよくご存じだし、野球や駅伝などのスポーツにも詳しいし、舞台もよく観にゆかれて、そういういろいろな経験や知識を短歌にされているから、作風も幅広い印象があります。gekoの会という短歌同人を結成されて活動されたり、所属されている結社の歌林の会(かりん)でもご活躍で、今年は第39回かりん賞を受賞されました。
 シュンイチさんのお歌は青春の一ページを切り取ったようなお歌や、弟が登場する兄目線のお歌なんかもとても好きなんですけど、以前、歌会の帰りにお話をしていた時に
「僕は歌会には相聞歌は出しません」
と話されていたことを思い出し、今日はこのお歌を選ばせていただきました。


白桃の産毛にそっとくちづけてきみの不在の愛おしきこと/シュンイチ 2017年2月14日お題「キス」

 
 これは、きみが女性だと思って読んだのですが、日本人女性って、けっこうマメに産毛のケアをする習慣があります。産毛を剃る専用の剃刀も売っているし、エステや美容形成外科の脱毛のメニューにも顔の脱毛も入っているくらい、女性にとっては、産毛というのは処理しなくてはならないと思っている人が多いものですし、恋人にもなるべく見られないように努める人が多いと思います。
 でも、この主体は、白桃の産毛にそっとくちづけることで今ここにはいないきみを思い出しています。主体が女性の産毛を気にしない人なのか、一緒に暮らしているから産毛を処理していない状態のすっぴんも見せられる関係なのかもしれない。白桃の産毛を見てくちづけたくなるほど、きみのことが好きでたまらないわけです。
 自然体の自分を白桃のように丸ごと愛してくれる主体のような人に出逢えたことはきみにとってすごく幸せだろうなと思うし、逢えない時でさえもこんなふうに自分のことを想ってくれているとわかったら、女冥利に尽きるだろうなと思いました。
 こういう恋のお歌を読むと、女性よりもずっと男性の方がロマンチストなのかもしれないとも思います。