本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日・お題「礼」

「電話でも礼をするのは日本人だけなんだよ」と笑う馬(マー)さん

 20代の頃、私の父が生まれたのと同じ年にできた老舗のディスカウントストアに三洋初の冷蔵庫担当の女性販売員として派遣されていたことがあった。
 このお店は、1フロアあたりの売上が日本一で毎年日経新聞のランキングに載るような、良い品がどのお店よりも安いから何でも飛ぶように売れるお店だったんだけど、そのお店で同じ売り場にいた同い年の社員が、台湾出身の馬さんだった。
 馬さんは、とにかく優秀で勉強熱心で、北京語、広東語、英語、日本語が堪能で、外国人のお客様がいらっしゃると、通訳を任されることも多かった。
 家電の説明なんて日本語でも難しいのに、馬さんは外国人が納得する接客を常にしていたし、日本語で接客しても完璧で、売り場にある家電の説明書が全部頭に入っているようで、わからないことがあると日本人の社員ではなく、馬さんに質問して教えてもらうことも何度もあった。
 馬さんは、賢い人なんだけど、ちょっと意地悪で、私に無茶ぶりをすることもあったし、私が電話を終えた直後に私を呼び止めて
「ねえ、小島さん」
に続けて言ったのが、この歌に詠んだ台詞である。
 何年か前にこのお店を検索してたら、馬さんはかなり出世されてるようだった。
 いつも、お昼ごはんも食べずに難しそうな本を読んでいた馬さん。
 私が日本で出会った外国人の中で、心から尊敬している人である。