本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日・お題「届」

休まずに毎日三時には起きて朝を届ける新聞少年

 私の弟は、小学校を卒業した翌朝から新聞配達のバイトを始めた。
 毎朝3時に起きて、自転車で新聞販売店まで向かい新聞を配達して帰宅し、家でピアノの練習をして、朝食を食べて、中学に入ってからはサッカー部の朝練へゆく。
 帰宅してからも、ピアノの練習をして、夕飯を食べてその日の授業の復習と予習をし夜9時には寝る。
 こんな生活で、ほとんど学年トップの成績を維持し、中3の時には生徒会長もやりながら、ピアノのコンクールにも挑戦し続け、時間を1秒も無駄にすることのない弟だった。
 こんな生活は、弟が大学受験をする高校3年生になる直前まで続いた。新聞の休刊日以外は1日も休むことなく。
 残念ながら、大学は定員が1名しかいない東京藝術大学の指揮科を志望していたので落ちてしまったのだけど、1浪して、なんとか、国立大学の音楽科のあるところに合格した時、弟は、上京に必要なお金を1円も親には払わせずに、貯めていた新聞配達の給料を使った。学費も全額免除の特待生になったから、親は、弟が小学校を卒業してからは弟にほとんどお金を使っていない。
 こういうハングリー精神旺盛な逆境に負けずに自分の道を切り開く子をいつも見てきたから、私は、自分はまだまだ甘えてるなあと思うし、何事にも真剣さが足りないと思って反省するのである。
 せめて、自分の好きなことに対してだけは一切妥協せずに頑張り抜く強さがほしい。
 弟はどこに出しても恥ずかしくない自慢の弟だし、一生頭が上がらない存在なのである。