本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日の100人の短歌・第7グループ⑤松岡拓司さん

 松岡拓司さんは、新聞歌壇や埼玉文芸賞など数々の投稿をされている方で、わたしの高田松原コンクールで入賞されたりしていらっしゃいます。
 うたの日にデビューされたのは私の4ヶ月ほど前なのですが、松岡さんは、とても美しい、けれど歌意を読み取るのが難しいお歌を詠まれる方で、私がめったに♪もいただけない、近藤芳美賞の受賞者の太田宣子さんのハートをたくさん送られている方でもあります。小説でいうなら私の歌は素人が書いた大衆文学なのだとしたら、松岡さんのお歌は純文学的なお歌で真逆なのです。絶対に私にはこんなふうには詠めないなあというお歌を詠まれます。


ごめん、もうプラトニックじゃ無理なんだ 雨、モノクロになる遊園地/松岡拓司 2017年8月12日お題「遊園地」


 このお題でそうきましたか!と驚きました。
 上の句は主体の告白です。おそらく、主体は、好きな人と何度かデートをしているのでしょう。でも、それはプラトニックな関係で、キスはおろか、手も繋いでいないのかもしれない。でも、今の関係から、もっと進んだ恋人同士の関係になりたいという想いを、相手に伝えたのです。遊園地で。それは、もしかしたら、ふたりきりになれる観覧車の中でだったかもしれません。
 次の一字空けはとても効果的だと思います。この一字空けの間に相手の返事があったと想像できるからです。
 そして、雨。この雨は、実際に降りだした雨なのか、それとも、主体の心の中に降りだした雨なのか。カラフルなはずだった遊園地が、主体にはモノクロに見えます。それはたぶん、相手の返事が友達以上にはなれないというものだったから。雨は、もしかしたら、主体の涙なのかもしれません。
 遊園地という楽しい場所を舞台にして、こんなにも辛く哀しい失恋のお歌を詠むことができるのだなあと感動しました。
 「、」の使い方も、主体の息づかいが感じられて好きです。