本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日の100人の短歌・第7グループ⑩知己凛さん

 知己凛さんは、とても精力的に短歌の活動をされていて、藍鯉歌会の主催、『珈琲日和』や『角笛』の発行、NHK短歌の入選や、河野裕子短歌賞の入賞など、とてもご活躍です。短歌結社の未来に入っておられ、黒瀬珂瀾先生の欄にいらっしゃいます。
 うたの日には2014年の4月からいらっしゃる大先輩なのですが、デビューされて8日連続でどんまいだったという方でもあります。たまに、うたの日の新人さんが成績が悪いと落ち込んで伝言板に愚痴を書き込まれますけど、そういう方には、知己凛さんを見習ってほしいし、「継続は力なり」というのを証明してくださっているのが知己凛さんだと思っています。


ただ一人残されたなら君に似たアンドロイドを作るだろうか/知己凛 2017年7月21日お題「ロボット」


 とてもせつないお歌です。
 君というのは、恋人や配偶者という読みでも恋のお歌として素晴らしいなと思うんですけど、この君は、主体のお子さんなのではないかと思います。というのも、作者の知己凛さんには息子さんがいらっしゃるからなんですけど、恋人や配偶者を喪うよりも、自分がお腹を痛めて産んで大切に育ててきた我が子に先立たれる方が、哀しみは深いのではないかと思うのです。
 大切な人の死は誰の死であっても辛く哀しいものなのですが、健康体であれば年長者から死ぬのが普通のことなので、自分よりずっと若い、それも、可愛い我が子に先立たれるというのは、耐えられない苦しみでしょう。
 もしかしたら、技術とお金さえあれば、我が子とそっくりなアンドロイドを作ってしまうのかもしれません。『鉄腕アトム』の天馬博士が、ひとり息子のトビオの死を嘆いて、トビオそっくりのアトムを作ったように。
 生きている限りいつかは必ず死ぬ。大切な人が死んでしまった時、自分はどう生きてゆくのか。私たちの一生の課題だと思います。