本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日の100人の短歌・第9グループ①けらさん

 けらさんは、私と同じ2016年にうたの日デビューされている先輩です。短歌だけでなく、俳句も川柳も都々逸もされていらっしゃって、特に、川柳は、昔あったごーしちごというアプリを使ってらっしゃったということなんですけど、このアプリの開発者の方が私の好きなバンドのボーカルのお姉さんだったりするので、今でもそのアプリのことをプロフィールに書いていらっしゃるけらさんには、勝手に親近感を持っています。
 けらさんはすごく作風が柔軟で幅広い器用なイメージがあって、好きなお歌がいくつもあったんですけど、特に大好きなお歌を2首選びました。



感情線真っ直ぐですねああこれは僕のところに向かってますね/けら 2016年12月26日・お題「感」

 
 私がWエンジンのチャンカワイさんなら、読んだ瞬間に「惚れてまうやろー!!!」と叫んでしまうくらいカッコいいです、この僕。
 男性で占い好きな人にあまり会ったことがないんだけれど、この僕は、手相まで見られるほど占いに詳しいのでしょう。ひょっとしたら、女性には占い好きが多いから、女性にモテるための努力として占いを勉強したのかもしれません。占いを信じる女性を馬鹿にするような男性もけっこう多い中、そこが、まず素敵だと思います。
 占い師以外の人に手相を見せる場合って、その時点で、その人に心を開いていると思うんですけど、僕にも、これはいける!という自信があるのでしょう。だから、真っ直ぐな感情線が僕のところに向かっていると断言できる。手相を見せるくらいの至近距離で、こんなことを言われたら必ずドキドキすると思うし、僕に対して好意があれば、思わず「うん」と答えちゃうと思うんです、相手の人。たぶん、僕は、そこまでちゃんと計算している。自分も相手のことが好きなのに、自分からは好きと言わずに、相手の気持ちを確認する。かなりの策士です。でも、そこがとてもいいです。



まだ何も言わないうちに婆ちゃんは「まんず、まんず」と笑ってくれる/けら 2017年5月15日・お題「言わない」


 方言を短歌の中に詠み込むのは、なかなか勇気の要ることです。よほど有名な方言でない限りは、その土地に住む人以外には通じないし、歌会の場に出すと、投票のために読者は意味を調べる必要が出てくるので、それが面倒だという人からの票は入らないかもしれないリスクもあるからです。
 でも、このお歌の「まんず、まんず」は、調べなくても前後の内容でなんとなく意味を理解できる人が多いのではないかと思います。
 もしかすると、この主体がこれからおばあ様に話そうとしている話は、いい話ではなく、悪い話なのかもしれない。でも、おばあ様は、主体が何も言わなくても笑顔で「まんず、まんず」と主体を全肯定して温かく包み込んでくれる人なのでしょう。
 主体とおばあ様との関係性が素敵ですし、「まんず、まんず」という方言の優しさ、美しさがとてもよく伝わってくる、素晴らしいお歌だと思います。