本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日の100人の短歌・第1グループ①近江瞬さん

 ネット歌会「うたの日」の皆様の短歌の中から1首ずつ最大100人分の感想をお伝えする企画です。宮城県石巻市で活動中の短歌部カプカプの部長でもあり、今年、短歌結社の塔の新人賞も受賞された近江瞬さんのお歌からスタートします。


あなたとはもう会わないと決めた日の一桁台まで割り勘にして/近江瞬 2019年3月15日お題「割」

 主体が男性と女性のどちらの立場からも読めるお歌だと思います。
 恋人同士のデートの場面では、男性が女性におごる、もしくは、割り勘にするかどちらかになるかと思うのですが、割り勘にする場合、一桁台まできっちり割り勘にするような金銭感覚の人というのは、嫌われがちです。
 もし、主体が男性ならば、相手の女性に嫌われるとわかっていて、敢えて、一桁台の割り勘を提案することで自分が悪者になり、相手から幻滅されようとしているのではないかなと思いました。そうすれば、相手の希望でまた会うことは避けられるから。
 主体が女性ならば、相手におごられるのは借りを作るようで嫌だからきっちり一桁台まで割り勘にしたのかなと思いました。ただ、作者の近江さんが男性であることを考えると、主体も男性なのかなという気はしています。
 最後まで優しい人でいたら、相手はきっと自分のことを忘れられなくなってしまうだろうし、新しい一歩も踏み出せないかもしれない。最後にわざと嫌われるような行動をするという優しさもあるのだなと思いました。