本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

第8回 ベストヒットおとの日♪・37 T・G・ヤンデルセンさん

 T・G・ヤンデルセンさんのおとの日のお歌は23首ありましたので3首ご紹介します。

 

 

初めての人にも甘えて腹見せる我が家の愛犬名前はセコム/T・G・ヤンデルセン

 

2022年1月11日・お題「犬」

 

 とても微笑ましい可愛らしいお歌です。

 

 犬好きにとっては、初めてでも甘えてお腹を見せてくれるような人懐っこい犬は大歓迎なのですが、番犬になってくれることも期待していた飼い主さんとしては複雑な気持ちになることでしょう。

 

 特にその願いの込められている結句の「セコム」という名前が効いていて、思わず大笑いしてしまいます。セコムちゃんに会ってみたくなりましたのでセコムしておいてください。

 

 

生まれ変わるなら花がいい好きな人に嗅がれてみたい踏まれてもいい/T・G・ヤンデルセン

 

2022年5月14日・お題「好」

 

 まず、このお歌は定型ではなく、6音と5音で句またがりして、さらに6音で字余りの上の句と7音と7音の下の句でできていて、声に出して読むとすっと読むのが難しいのですが、それがとてもプラスに働いているように感じます。

 

 生まれ変わりたいものが花だということなので一見美しいお歌なのですが、その動機である三句から結句にかけて読むとかなりアブノーマルな願望を主体が抱いていることがわかります。ちょっと、谷崎潤一郎の小説の一節を読んだかのような感じです。

 

 この主体の歪な愛情表現には定型の整ったお歌にするよりも、破調でひっかかりの多いこのお歌の方が断然いい!と思いました。

 

 

まっしろい小さな箱を撫で祖母はおかえりなさいといつもの声で/T・G・ヤンデルセン

 

2022年11月22日・お題「夫婦」

 

 昨年のいい夫婦の日に出された「夫婦」というお題で詠まれたこのお歌は、とても静かなんだけれど、究極の夫婦愛だなと思いました。

 

 主体のお祖父様のお葬式の日の出来事が詠まれているのだと思います。まっしろい小さな箱は骨壺で、思わず撫でたくなるくらいにお祖母様はお祖父様のことを愛おしく思っていらっしゃるのでしょう。

 

 おかえりなさいの声を「いつもの声で」と強調した結句もすごくいいなと思います。おそらく、いつもの声を取り戻すまでに、お祖母様はたくさん泣かれたのだろうなと想像が広がります。

 

 理想の夫婦の姿がここにありました。