第8回 ベストヒットおとの日♪・39 晴架さん
晴架さんのおとの日のお歌は78首ありましたので選ぶのが大変だったんですが3首ご紹介します。
①
配線を間違えたかな伝わったはずの気持ちに反応がない/晴架
2021年5月10日・お題「自由詠」
発想はユニークなんですがとてもせつない片想いのお歌です。
よく短歌では人間以外のものを擬人化することがありますが、このお歌ではそれと逆で人間である主体、もしくはその片想いの相手を機械化しています。
主体は相手に告白をしたんだけれど反応がないので、配線を間違えたかなと思い込んで現実逃避しようとしているのではないでしょうか。もし、自分や相手が人間ではなくロボットだとしたら最初から心というものはなく告白に対する反応もプログラミングされているものだと割り切ることができます。配線の間違いなら次は正しい配線にすればいいのです。
でも、おそらく、相手から告白に対する誠実な返事さえあれば、主体は自分たちを機械化してまで自分の心を守ろうとする必要はなかったのではないかと思います。
一見明るいお歌のようで、実は救いのない恋だと思います。しかも、一度は伝わったはずと信じていたのですから、より一層せつないです。
②
刃にも光にもなるひとだから壊れない距離のままそばにいる/晴架
2023年1月13日・お題「にも」
このひとは、主体の恋人なのか、友人なのか、家族なのかは明らかにされていませんが、主体にとってとても大切なかけがえのないひとなのだろうなと思います。光はともかく、刃にもなるひとだとわかっていてそばにいると決意しているので、壊れない距離を保とうと気をつけているとはいえ、相当な覚悟が必要だろうと思うからです。
相手の長所だけではなくて短所もちゃんと受け入れて、適度な距離で付き合える主体はすごく大人だなと思いました。
また、刃物も光るものですし、光りも強烈だと暑すぎたりまぶしすぎたりするので、長所と短所は表裏一体だなと考えさせられました。
③
不本意に淋しそうだと思われて一人称ではっきり喋る/晴架
2023年5月24日・お題「一人」
お題の「一人」を最大限に活かしたお歌だと思います。
不本意に淋しそうだと思われてしまったということは、その時、主体は一人で行動しているところを誰か知人に見られて、勝手に淋しそうだと決めつけられたのではないでしょうか。
けれど、一人でいるのが淋しい人もいれば、気楽だったり、心地よいと思う人もいて、主体も決して淋しくはないのだと思います。
はっきりと喋る一人称に、主体がしっかりと自分がどうしたいのか、嫌なことは嫌だと伝えることのできる性格であることが表れているように感じられ、とても気持ちよかったです。
一人といえばなんとなく心細そうなイメージなのが、一人称というと自分の意志をきちんと持っているイメージになるのも面白いと思いました。