本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日の100人の短歌・第2グループ④寿々多実果さん

 寿々多実果さんとは、たぶん、うたの日歴もそんなに変わらなくて、同じ九州出身ということもあって、勝手に親近感を抱いて、実果さんとお呼びしているんだけど、本当は、多実果さんかもしれないよなあ……なんて思ったりもしています。お名前、どこで区切るのでしょうか?(笑)
 実果さんのお歌も作風が幅広くて、官能的なお歌も上手だし、長崎の方言で詠まれたお歌もすごく温かくて好きだし、どのお歌にしようかかなり迷いました。


もう会わない君の名前を辞書に足し想像上の生き物と書く/寿々多実果 2018年8月9日「像」

 この君は、主体が別れることにした恋人でしょう。よく、恋愛が終わった後の行動として、女性は想い出を上書き保存するのに対して、男性は名前をつけて保存するから、今まで好きになった人のことはみんな覚えていると言われます。私は、女性ではあるけれど、完全に名前をつけて保存する派だったりします。
 このお歌の主体は、名前をつけて保存するタイプに近い行動を取ってはいるけど、女性主体の方が面白いかなと思って読みました。
 もう会わないと決めている君だけれど、主体は、忘れたくなくて、辞書に名前を足します。ユニークなのはここからなのですが、想像上の生き物と書くのです。彼は、確かに実在する人なのに。
 おそらく、主体は、まだ、君のことを愛しているのだと思います。彼に振られて、別れることにしたのではないでしょうか。でも、君のことを引きずっていては前には進めないから、君の名前は覚えておくけれど、人間ではなく想像上の生き物だったのだと思い込むことにする。
 クスッと笑えるお歌のようにも見えるけれど、実は、すごくせつないお歌なのではないかなと思いました。