本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日・お題「床屋」

床屋へと顔の産毛を剃りにゆく祖母は女だ灰になるまで

 

 約1ヶ月ぶりに薔薇をいただいた。亡くなった祖母の想い出を詠んだ歌なので嬉しい。

 私の祖母は、田舎の人だけどお洒落で、美容にも気を遣っていて、髪を切って染めてパーマをかけるのは美容室だったけど、顔の産毛を剃りに床屋にも通う人だった。剃刀を扱えるのは理容師さんだけだし、安全剃刀で自己処理するより、理容師さんの切れ味の良い剃刀で剃ってもらうと肌のトーンがグッと明るくなって、化粧のノリがぜんぜん違うらしい。

 晩年は認知症で亡くなるまでずっと施設にいた祖母だから、大好きなお洒落もあまりできなくなってしまったのだけど、お見舞いに行った母が安全剃刀で産毛を剃って薄化粧をしてあげるととても喜んだそうだ。

 「灰になるまで女は女」という言葉が私は大好きで、自分もそうありたいと思っているのだけど、祖母の影響はとても大きい。 

 祖父には親が決めた婚約者がいたのに、バツイチで子供がひとりいる祖母に求婚したうえ、養子に入ってくれたというのだから、かなりの大恋愛だったようだ。でも、祖父はモテる人で女遊びも激しかったそうで、祖母は苦労させられたらしいが、祖父との間に9人も子供を産み(ひとりは幼児期に病死)、一生添い遂げた。 

 祖父が亡くなったのは妹が亡くなったのと同じ年だったから、祖母は26年間未亡人だったのだけど、死ぬまでずっと祖父を愛していた。体調が悪くて弱気になるとすぐ

「じいちゃん、早く迎えに来て」

と言ってたし、施設に入るまでは毎日朝晩の祈りを欠かさない人だったから、化粧もお洒落も自分のためだけではなく、最愛の祖父に見せるためのものだったのではないだろうかと思う。