本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日・お題「コンプレックス」

中卒の苦労を語る父の子が仇のようにオール5を取る

 

 

 母を3歳、父を7歳で亡くした私の父は、親戚中をたらい回しにされた後、15歳上の異母姉夫婦に育てられた。とても貧しい家庭だったし、異母姉にも幼い子供がいたし、父は中学に入る時には高校進学を諦めていたそうで、中学時代は国語の教科書をたった1回開いたことがある以外は全く勉強せず、異母姉の娘をおんぶして部活の卓球をしたり、トマトをひとつ5円で売って歩くバイトをしたりしていたらしい。

 中学卒業後は、宮崎から愛知のクリーニング工場に就職した父だが、その後も人生は苦労の連続で、父の口癖は

「お前たちはしっかり勉強して大学に行って偉くなれ」

だった。学歴コンプレックスの塊のような人だった。

 私は出来が悪くて父の期待には応えられなかったのだが、弟は貧しくて塾にも通えないのに勉強も1番だったし、運動も得意だったし、4歳から習ってたピアノはコンクールに入賞してリサイタルが開かれたことがあるくらい上手だったし、サッカー部にも入ってたし、生徒会長だったし、毎朝3時に起きて新聞配達もする勤労少年だった。

 この歌と違って、弟は父のためというよりは自分のために努力していたのだと思うが、自分の弟ということを抜きにしても、彼がやっていたことは並大抵のことではないと思う。要領の良さもあって器用でもあったが、1秒も無駄な時間を過ごさないように、毎日スケジュールを円グラフに手書きして、その通りに生活している子だった。朝が早いから必ず21時までには寝ていた。

 弟を見習えと常に比較されて育った私だけど、私には絶対に真似できないと思うし、弟のことは心から尊敬している。