今日の自由詠
炎天下缶の烏龍茶をくれた通りすがりの中国人が
今日みたいな暑い日にはよく思い出すことがある。
私が大学中退後に登録した最初の派遣会社でやった初めての仕事は、コンタクトレンズ屋のビラ配りや、アイフルのポケットティッシュを配って時給1000円というものだった。
ビラ配りの仕事は心ない人に
「ティッシュくらいつけろ!」
と怒鳴られたり、ナンパされたりするし、アイフルのポケットティッシュ配りはアイフルのポロシャツと黒のタイトスカートにストッキングに黒のパンプス着用と決まってたので長時間立ちっぱなしで足は痛いし、これまた心ない人に
「その段ボールごとよこせ」
と言われたり、なかなか辛い仕事だった。
その日は、8月の暑い日で、いつも通り私は、
「アイフルです。よろしくお願い致します」
と汗だくでニコニコしながら大きな声を出して東京駅の前でティッシュを配っていた。すると、中国人のおばあさんとお孫さんだと思われる若者のふたり連れが通りかかった。ふたりにもティッシュを渡して、そのままティッシュを配り続けていたら、そのふたりが通りを引き返してくる。どうしたのだろう?と思ったら、ふたりは、サントリーの烏龍茶を私にくれたのだ。とても冷たい烏龍茶は、きっと、自動販売機で買ってくれたばかりなのだろう。私があまりにも汗っかきなものだから、水分補給させてあげないとヤバいと思ってくださったのかもしれない。
この時、私は、一応、大学の第二外国語は中国語であったのに、お礼のひとつも満足に伝えられない自分の語学力のなさを初めて恥ずかしいと思った。
日本と中国の関係は決して良好であるとは言えないし、マナーの悪い中国人観光客がいるのも事実ではあるけれども、こんなにも心優しい人たちだっていることは絶対に忘れてはならないし、政治的に国と国との仲が良くないとしても、民間人同士は友好を深めてゆけたらいいなと思う。