本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日・お題「今」

遠慮なく醤油を貸し借りし合ってた今村さんがいない東京

 

 このお題を見て真っ先に頭に浮かんだのが、私の実家の隣に住む今村さんご一家のことだった。

 私たちが住んでいたのは、木造の一戸建ての借家で、同じ造りの家が大家さんの所有する土地に8軒建っていた。

 今村さんの家には、私と同い年の女の子と2歳下の男の子の姉弟がいて、私たちは幼なじみとしてよく一緒に遊んだし、親同士も仲がよくて、料理をする時に、調味料や卵の買い忘れに気づくと、気軽に貸し借りできる関係だった。

 今村さんは、新婚の頃から今でもあの家にずっと住んでいるから、もう40年以上になるのか。以前、ご主人がひき逃げ事故で亡くなって、犯人が2年くらい県外に逃亡してた時は、どんなに辛く悔しく悲しかったことだろうと思う。でも、今村さんは変わらずに私の実家の隣に住み続けていて、最近は、お孫さんたちがよく遊びに来て、明るい笑い声が絶えないらしい。

 もう、家自体が古すぎていつまで住めるのかはわからないけれど、今村さんにはいつまでも、我が家の良き隣人として、ずっとお元気でいていただきたい。