今日の自由詠
いつどこで再会してもいいように試作しているバナナチップス
今まで好きな人にはちょこちょこいろんなプレゼントをしてきたけれど、食べ物の中でいちばん反応が大きかったのがバナナチップスだった。
ドライフルーツが好きだというのは教えてもらってたので、世界中のドライフルーツの量り売りをしているお店でいろいろ試食してバナナチップスに決めて、その日のイベントには、彼は来られるかわからなかったんだけど、私はバナナチップスを持参した。彼は仕事の帰りに駆けつけてくれたのだった。ダウンジャケットを着ていたから、かなり寒い日だった。
彼は、日頃は徹底的に私とふたりきりになるのを避ける人だけど、その日は、珍しく、ふたりだけで同じ電車で途中まで帰ることになった。私は駅のホームでバナナチップスを渡した。彼は、喜んでいた。電車の中では会話はほとんどなく、彼が持ってきてくれていた本を見せてもらっていた。彼とふたりきりになるのがあれが最後だとわかっていたら、もっといろいろ話したかったけど、仕方ない。
バナナチップスを食べたという彼から、丁重なお礼のメールが届いた。彼は、家族の話もしてくれるほどで、よほど、好物だったのだなと思った。
実際にはまだ試していないが、バナナチップスは、意外と簡単に作れるようだ。彼と再会できる可能性はほとんどないけれど、それでも、いつか奇跡が起きることを信じて、バナナチップスを上手に作れるようになっておこうか。無駄な努力に終わるだろうか。