本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

今日の自由詠

真夜中に爪を切るたび念じてた「早く死んでよお父さん」って

 夜に爪を切ると親の死に目に会えないという迷信があるけれど、お風呂上がりの方が爪が柔らかくなってる気もするので、子供の頃からいつも爪は夜に切ってきた。
 それに、私は、子供の頃から父に虐待されて、小学校の高学年くらいからは毎日のように父を殺す完全犯罪はできるだろうかと考えていたくらいだったので、別に、父の死に目に会えなくても後悔なんてしないはずだとも思っていた。
 父は、3歳の時に母を、7歳の時に父を亡くしていたので、ずっと自分は長生きできないだろうと思っていて、それをたびたび口にしていたのだけど、そのたびに私は、(お父さんなんか早く死ねばいいのに)と思ってきたし、酒乱で仕事もせずパチンコばかりしてたびたび私に暴言を吐き暴力を振るう父さえ死ねば、みんな楽になるし、家の中が明るくなるに違いないと信じてもいた。
 結局、父は、たびたび病気をしながらも、母が食事にとても気を遣ってあげてるのもあって、今年で72歳になろうとしている。
 昨年11年ぶりに帰省して再会した父は、すっかり痩せて衰えていて、頑固な性格は変わってはいなかったけど、だいぶ性格は穏やかになっていて、もう、父を見ても殺意は湧かなかった。
 父にされてきた酷い仕打ちは許せないけれども、父危篤の知らせがあった時には、なるべく飛んで帰ろうとは思えるようになったから、時が解決することもあるのだな。