本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日の100人の短歌・第4グループ②実岡まつさん

 実岡まつさんは、うたの日に来られてまだ1年とちょっとで新しい方で、筆名も最初はそらまめさん、それからひろりさんになり、今の実岡まつさんに改名されています。
 たぶん、私と出詠するお部屋の違うことが多いのか、どの筆名のお歌もほとんど初見でしたので、すごく新鮮な気持ちになりました。最初は、句と句の間に半角スペースを必ず入れてらっしゃったりして、人は短期間で急成長するものなのだなあなんて思いながら拝読しました。
 小さいお子さんがいらっしゃって、育児詠なんかも素敵なのですが、今回はこちらの歌を引かせていただきます。


帰宅して洗う秋刀魚のやわらかさまでも哀しく大根おろす/実岡まつ 2019年9月16日お題「秋刀魚」


 とても、想像の広がるお歌です。秋刀魚のやわらかさまでもが哀しく思えるほどの何が主体の身に起こったのだろうか?と。やわらかさで哀しくなるということは、例えば、主体は女性だとして、お腹の中に赤ちゃんがいたけど流産してしまったとか、ペットが亡くなってしまったとか、何か、やわらかい感じの命が失われるような、とても辛いことがあったのかもしれないと思ったりもしました。あくまでも、私の想像です。
 とにかく、とても哀しい出来事があったけれども、帰宅したら今夜の夕飯を作らなければならない。これからも生きてゆかねばならないから。食中毒対策だと思いますが、きちんと秋刀魚を洗い、秋刀魚に添える大根もおろす主体の生真面目さに、哀しい時くらい、出前でもお総菜でもいいから、楽に生きたっていいんだよと言いたくなりました。