今日の自由詠
血に飢えたドラキュラにならないように君の画像は削除してない
ひとつだけ、好きな人に嘘をついたことがある。
以前、彼を撮影した画像を入手できたんだけど、それを知った彼が削除するように求めてきたことがあった。
その時、一応、待ち受け画面に登録してた画像は削除したんだけど、送られてきた元の画像そのものを削除する方法がわからなくて、そのままにしていた。彼には削除したと伝えた。
その時、私には、この人とは二度と逢えなくなる日が来るだろうという予感があった。誰にでも優しい彼が、私にだけ事務的な冷たい態度を取るようになっていたからだ。だから、もしもの時のために、この画像はしまっておこうと思った。
そして、悪い予感は的中して、彼は、私に逢うのはもちろん、連絡を取るのも拒絶され音信不通になった。
しばらくは、画像のことも忘れていたんだけど、彼のことを想って泣いてばかりだった時に、ふと、画像のことを思い出した。
画像の彼は優しく微笑んでいて、私が彼を好きになった時のまま何も変わっていないように見える。実際は、彼には憎まれているから、虚しくもあるのだけど、それでも、彼に逢いたくてたまらなくなった時、想い出が洪水のように押し寄せてくる時、私は彼の画像を見つめて心を整える。
嘘をついたのは申し訳なかったけど、後悔はしていない。