本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

第5回 ベストヒットおとの日♪・21 咲兵衛さん

 まただいぶ間が空いてしまいましたが、なんとかクリスマスイブに間に合わせました!

 

 咲兵衛さんのおとの日のお歌は数えた時点で12首ありましたので、3首お届けします。

 

 

手をつなぎ歩む幼き日は遠くさよならばかりの子離れの日々/咲兵衛

 

 2022年3月23日・お題「さよなら」

 

 もう大きくなって手のかからなくなった主体のお子さんを見ながら、まだ手をつないで歩いていた幼い頃を振り返って、淋しさを感じていることが伝わってきます。

 

 子どもにできることがひとつずつ増えてゆくのは親としては大きな喜びなのだろうし、もちろん主体だって成長したお子さんの姿は誇らしいのだろうとは思うのですが、それよりも淋しさを感じていることが「さよならばかりの」という表現からとてもよく伝わってくるのです。

 

 きっとこの主体は、お子さんのためにしてあげるひとつひとつのことをとても楽しんでこられたからこそ、子離れすることがとても淋しいのではないかと思いました。

 

 

自己管理能力低めのわたしでも双子のパンダは観に行く予定/咲兵衛

 

 2022年5月9日・お題「管」

 

 

 「自己管理能力」という言葉から「双子のパンダ」への発想の飛躍が面白く、この時だからこそ詠めた旬なお歌だったと思います。

 

 咲兵衛さんは東京の方なので、双子のパンダといえば和歌山ではなく上野のパンダのことという前提で読みましたけど、コロナ禍ということもあり、しばらくの間上野動物園では、パンダの母子の観覧をするのに、事前にネットで抽選に申し込んで、当選した人だけが入場できるシステムでした。その抽選が意外と面倒で希望日のけっこう前にエントリーしないといけないし、発表の日時も覚えておかなくてはいけないし、当選したら必ずその日時に入場しなければならないので、主体のように自己管理能力が低いという自覚のある人にとっては、かなり複雑なミッションなのです。

 

 でも、主体は双子のパンダに数分会うだけのために何日も前から体調を整えたり、気分を上げたりして入念に準備をするのだと思います。それだけの魅力が、まだ赤ちゃんの双子のパンダにはありました。すごく共感できるお歌でした。

 

 

花穂紫蘇摘みてこそげば秋かをる醤油にひたす刺身の旨さ/咲兵衛

 

 2022年9月28日・お題「味」

 

 

 ものすごく美味しそうなお歌です!このお歌のおかげで長年の謎であった、お刺身にたまに添えられている小花のついたハーブのようなものの名前が花穂紫蘇ということを知りひとつ賢くなりました。ありがとうございます。

 

 短歌は文字を目で読むものなのに、このお歌からは花穂紫蘇の香りも醤油の香りも漂ってきているような気がするし、すごくお刺身を食べたくなるのです。お題は詠み込まれていなくても、味も想像できるのがとてもいいなと思いました。