本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

誕生日には歌集を

 私は、歌集は図書館で読めるものはなるべく図書館で借りるようにしていて、滅多に買わないのだけど、去年の誕生日に、公募ガイド主催の短歌のコンテストに入賞していただいたギフト券を利用して河野裕子さんの『あなた』を買った時、短歌を続けている間は毎年誕生日には歌集を買うことにしようと思った。

 今年は、新宿紀伊國屋書店で数十分悩み、伊藤一彦さんの『光の庭』を購入した。


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 装丁がとても素敵で、購入の決め手になったのは、背表紙に書いてあった

「私の住む宮崎県全体が光の庭である。」

という一文。

 これは、宮崎に住んでいた頃は当たり前すぎて気付かなかったことなのだけど、東京から宮崎に帰省するたびに、東京とは空や海の青さも緑の濃さも花の明るさもぜんぜん違うように思えて仕方なくて、太陽の光が宮崎の方が強いのかな?と思っていたのだけど、それがこんなに的確に表現されている文章に魂を揺さぶられた。宮崎県人としては、必ず読んでおかなくてはならない歌集のように思えた。

 また、この歌集は2017年に1日1首発表された短歌日記であるというところにも惹かれた。私も、拙い歌ではあるけれども、今年の1月1日から毎日欠かさず自由詠を1首マイブックに記録しているし、もしも、この先、自分が何かの手違いで歌集を出版する機会があると仮定した時に、私は、短歌だけを載せた歌集にはしたくなくて、その歌にエッセイを添えたいと思っていることもあって、勉強させていただきたいと思ったのだ。

 うたの日の掲示板にも書いたけれど、特に私が感動したお歌が次の2首だった。

 

歌もまた「うまさ」にあらず「要するに自分は自分の歌を作る」覚悟

 

選歌とは恩返しならむかつてわれも選ばれ育てられし思へば

 

 どんな世界でも一流の人ほど腰が低く謙虚な人が多いけれど、伊藤一彦さんほどの大物がこのような姿勢で真摯に短歌と向かい合っていらっしゃることに心が洗われるようだったし、私も小手先の技術にとらわれて心のない歌を詠みたくないと思ってきたのだけど、それは間違いではなかったのだなとホッとした。また、選歌が恩返しだという考え方にも感心した。

 私も歌を詠む時、他の人のお歌を読んで感想を書く時、この2首のお歌のような心を忘れてはならないと思った。

 いつか、宮崎に帰省して伊藤一彦さんにお目にかかる機会があったら、この歌集にサインをいただけたらと思う。そして、短歌を続けるうえで大切なことを学ばせていただけたお礼をお伝えしたい。