本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

世界でいちばん好きな飲み物

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 子供の頃、伯父夫婦が地元・宮崎でスーパーマーケットを経営していた。
 個人経営のスーパーにしてはなかなか立派な店で、伯母の手作りの惣菜を作るための厨房もあったし、生鮮食品も花もお菓子も日用品も文具も雑誌も何でも売ってた。
 伯父は、青果と精肉の両方を担当していたんだけど、たまに私もトラックの助手席に乗せられて競りに連れていってもらったり、店でどんな生鮮食品が美味しいのか教えてもらったり、漫画雑誌の発売日には立ち読みさせてもらったり、伯母の惣菜作りを手伝ったり、遊び場のような感覚で生きた勉強をさせてもらってたなあと思う。
 当時、私の家は父が転職を繰り返したり入退院を繰り返したりで母の収入だけで生活していたのでとても貧しかったのだが、伯父夫婦はよく売れ残った生鮮食品や惣菜を私たちにくれた。伯父夫婦のおかげでひもじい思いだけはすることがなかったどころか、とても豪勢な食卓だったと思う。
 春になると、必ず伯父が作ってくれたのが苺ミルクで、ちょっと熟れすぎた甘い甘い苺で作るから、すごく美味しかった。いつも優しい伯父は、私にとっては実の父以上に父のようで、ずっと
「結婚するなら学おじちゃんみたいな人がいい」
とか、
「おばちゃんが死んだら私がおじちゃんの後妻になる」
とか言っていた。大好きな大好きな伯父だった。
 もう、伯父は他界してしまってこの世にはいないんだけど、苺の旬になると伯父の作ってくれた苺ミルクを思い出すのだ。
 私はお酒も強い方だし、コーヒーや紅茶も大好きなんだけど、世界でいちばん好きな飲み物は何かと訊かれたら苺ミルクだと即答すると思う。苺ミルクを味わうたびに、伯父との大切な想い出が昨日のことのように蘇る。