本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日・お題「希」

東京で希望をなくしかけるたび大家さんから届く差し入れ
 

 今のアパートに住んで16年になるけど、大家さんが本当に素晴らしい人だ。

 まず、今まで、家賃が2回も下がった。最初の契約の時に家賃43000円、敷金1か月分、礼金と更新料はなしというだけでもとても良心的だと思うのだけど、住人が減ってきたから家賃を安くするという理由で37000円になり、それがさらに30000円になった。この中には、管理費と水道代の2000円と振込手数料も込みなのである。なんて、善良な大家さんなのだろう。

 さらに、私は、借金の返済が大変で家賃を最大半年分滞納したことがあるけれど、大家さんは待ってくださった。

 秋には

「立派な秋刀魚があったのよ。大根おろしも食べてね」

と秋刀魚と大根をくださったり、

「庭の柿、小さいけど美味しいから、好きなだけ取って食べてね」

と声をかけてくださったり、私が鬱状態が酷くて対話が難しい期間にはずっとお手紙やメールでやり取りしてくださって、ポストの中に、缶入りのクッキーが入ってたり、蜜たっぷりの青森のりんごが入ってたこともあった。

「長く住んでいただいてるから、できるだけのことはしてあげたいのよ。何でも言ってね」

と、いつも気遣ってくださる。

 東京の人は冷たいと言われるけれど、いちばん身近な東京の人である大家さんがこんなにいい人だから、私は、東京を嫌いにならずに済んでいるのだと思う。