本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

2018年・自選5首

 今年もなんとか毎日歌を詠めたから、それなりに数もあるので、いろいろなところから1首ずつ引いてみたい。

君なしの世界で生きてゆくことを死ぬことよりも怖いと思う

(『あみもの 第三号』「ラブレター」より)

 今年はなんといっても、御殿山みなみさんが発足してくれた短歌連作サークル『あみもの』に参加させていただいたことが、短歌を詠むうえで大きく変わったことで、発起人、そして編集人が御殿山みなみさんじゃなかったら、たぶん、私が連作を作ろうなんて思うことはなかったんじゃないかと思うので、とても感謝している。
 これは、まだ、ミオナマジコの時に作った連作の中の1首で、Twitterでは、この連作の中の他の歌の方が評判はよかったんだけど、この歌は、私の恋を1首で表現したらこうなるなという歌で、今もこの時の想いのままだ。
 でも、そろそろ、好きな人との想い出も詠み尽くしてきたので、恋の歌は空想しか詠めなくなるんじゃないかという不安しかない。


人生の再起を賭けた面接に執念色の口紅でゆく

(うたの日・2018年5月16日 お題「新しい色名を考えてください」)
 
 今年の私を表すのが、このお題のお陰で自分で考えることができた執念色の1年だったと言えるのではないかと思う。
 好きな人や友達になれそうだと思っていた人に深く傷つけられ、病気が酷く悪化し、何度も命を絶とうとするまで追い込まれたけど、なんとか踏ん張って生きてきたし、短歌も下手ではあるけど辞めずに続けてこられた。社会復帰もできた。
 来年はこの執念色を明るくて綺麗な色に変えることができるだろうか。


点を描くように毎日褒めてゆき結んだ線は未来へ伸びる

(『数学セミナー』7月号 「数学短歌の時間」永田紅選・お題「線」)

 数学のぜんぜんできない私が、数学を愛する高校生や大学生や数学を仕事にしている人たちなんかの愛読書であると思われる『数学セミナー』を買うことになるなんて、想像もしていなかった。
 この連載が始まるとTwitterで見た時に、選者に永田紅先生がいらっしゃると知って、ぜひ、私の歌も読んでいただけたら、と思った。
 これは、その永田紅先生に初めて選んでいただいた歌で、線と聞いて思い出したのが松本清張の『点と線』というタイトルで、点を繋いで線ができるイメージの歌を考えた時に、人を褒めて伸ばすのってそういう感じだよなあと思ってできたのだった。永田紅先生の評が本当に温かく丁寧な評で、思わず涙ぐんでしまうくらい嬉しかった。


母だけがふわっと父を嗜める花の名前を教えるように

(『NHK短歌』10月号・松村由利子選 お題「花」佳作秀歌)  

 家族詠というのは、家族がいる限りはずっと続けてゆきたいと思っているのだけど、これは、自分の両親の関係性であったり、花好きな母らしさをよく表現できたなあと思っている。
 母がいなければ、おそらく、父は、誰からも見放されて絶対に生きてゆけないような人なんだけれど、母はとにかく優しい。そんな母だからこそ、父にとって耳の痛い話もすることができるのだと思うし、他の人が言ってもダメなのだ。
 ちなみに、家族詠は、母にはいろいろ話して聴かせてきたが、父には秘密にしている。もちろん、私が短歌をやっていることは父も知っているけど、父の歌は基本的に父の日頃の悪行を暴露しているものだったり、父への恨みを込めたものがけっこうあるので、本人が見たらショックであろうと思い、父が死んだら、棺桶の中に父の歌をまとめたものを入れようかと思っている。

シャンシャンがりんごを食べたニュースだけ読んでスマホの電源を切る

(2018年9月14日NHK文化センター青山教室「月の下歌会」栗木京子選・お題「りんご」)

 プロの歌人の評がいただける歌会に参加するのは生まれて初めてだったけど、どの短歌も本当に深く丁寧に読んでくださり、必ずどの参加者の歌もまずは褒めてから改善点を伝えてくださるので、とても勉強になった歌会だった。
 シャンシャンも、もうすぐ中国に行ってしまうから、今のうちに詠んでおかなければ!という謎の使命感で詠んだ歌。だが、未だに実物のシャンシャンとはご対面できていないので、来年こそ、会いに行かなくてはと思っている。


 来年は、恋の歌をどうしていったらいいのかということ、自然や景色なども詠めるようになりたいということ、連作がまだまだ下手すぎるから1首ずつ読んでもどれもいいと思える連作ができるようになること、などなど課題は山積みだけど、どんなに辛い時も悲しい時も、詠むことから逃げないで、不調な時は不調な時なりの歌を詠み続けられたらなと思う。