本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

今日の自由詠

故郷にないデニーズでひとりきり食べるオニオングラタンスープ

 私はスープが大好きで、スープだけのレシピ本も何冊か持っているのだが、高校の時にレシピ本で見たオニオングラタンスープっていうのがどんな味なのか気になって仕方なかった。作り方は載ってはいるものの、一度も食べたことがないものだから、どんな味なのか知りたかったのだ。
 大学受験の時、初めて上京し、志望大学の3年生の先輩のアパートに泊めてもらってお世話していただいたんだけど、そのお礼に母が他の保護者の皆さんと話し合って10000円包んだらしく、先輩は私が宮崎に帰る日にデニーズに連れて行ってくださって、
「直美ちゃんのお母さんからお金をいただいたから、何でも好きなものを食べてね」
と言われ、そのメニューの中に、ずっとどんな味なのか気になっていたオニオングラタンスープを発見し、メインの料理の他にオニオングラタンスープも頼むことができた。
 じっくり飴色に炒めた玉葱の優しい旨味のスープがしみたバゲットに、とろけるチーズのコク。すごく好きな味だった。
 あれ以来、デニーズでは、必ずといっていいほどオニオングラタンスープを頼む。幸い、定番メニューとしてずっとあるから、いつでも頼むことができる。
 ファミリーレストランというのは、自分には友達も恋人も家族もいない現実を突きつけられる場所でもあるのだが、いつか、私も家庭を築くことがあるかもしれないという夢を見ながら、ひとりで、熱々のオニオングラタンスープを食べる時間は、たまには必要だなと思う。 
 もし、宮崎にデニーズができるようなことがあれば、ひょっとしたら、それが宮崎に戻るきっかけになるかもしれないなと思うくらいに、デニーズのオニオングラタンスープは私にとって特別な一皿である。