本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日・お題「紅茶」

千円でおかっぱにする少女でも紅茶でもてなすビューティーユアサ


 ビューティーユアサは、私の実家の近くに実在する美容室である。
 私が生まれてから3歳で熊本に引っ越す前は、ビューティーユアサは我が家のクリーニング店の隣であった。ビューティーユアサのおばちゃんは、私を赤ちゃんの頃からご存じの方だ。
 4歳の時に京都に引っ越し、6歳で宮崎の母の実家に引っ越し、私が小学校に入学する直前にまたビューティーユアサの近所に引っ越した。
 幼い頃は母が髪を切ってくれていたが、小学校1年生から私はビューティーユアサに通った。七五三の着付けとヘアメイクもお願いした。
 ビューティーユアサでは、おばちゃんが必ず来店客に紅茶を淹れてくれた。日東紅茶のティーバッグの時もあったし、缶入りの粉末のレモンティーの時もあったけど、我が家は母がコーヒー好きなのもあって紅茶を飲む機会はあまりなかったから、髪を切ってもらう前に紅茶をいただくというのは特別なことだった。
 でも、高校生くらいになってちょっとお洒落に目覚めると、繁華街にあるカット3000円くらいの美容室に浮気をした。浮気相手の美容室は確かに当時の流行りの髪型にしてくれたけど、待ってる間にお茶は出なかった。ビューティーユアサのおばちゃんの顔が頭に浮かんでちょっと胸が痛くなった。
 上京して何軒か美容室に行ったけど、私が安い美容室ばかりに行ってるからかもしれないけど、お茶でもてなしてくれる美容室には未だに出会ったことがない。
 ビューティーユアサのおばちゃんが、どれだけひとりひとりのお客を大切にしてくれていたのか、今ならとてもよくわかる。
 もう11年も帰省していないのだが、次に実家に帰った時はビューティーユアサに髪を切りにゆこうか。