本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日の100人の短歌・第5グループ③紺野なつさん

 紺野なつさんといえば、まだ幼い娘さんと飼っている猫ちゃんがとても可愛らしく、なつさんのツイートは私の癒しなんですけど、娘さんの2歳のお誕生日を祝う連作には思わず涙が溢れてきたのがまるで昨日のことのようです。
 そんな紺野なつさんのお歌は、言葉選びがとても柔らかくて優しいお歌が多い印象です。


曖昧なさよならだった湖に浮かんだ月がたゆたうような/紺野なつ 2018年6月27日お題「湖」

 なんて美しいお歌なのだろうか!と思った時には、頭の中で、ドビュッシーの「月の光」が流れ、まるで印象派の絵画のような光景が浮かびました。
 誰とのさよならなのかは明らかにはされていませんが、そのさよならは曖昧で、はっきりさよならとお互いに告げられなかったのでしょう。湖に浮かんだ月がたゆたう様子と重なるくらいに、別れた相手に取り残されて心もとない、ぼんやりとした状態の主体の姿が想像できます。その時の相手の美しさを忘れることができず、さよならが夢であってくれたらいいのに……と。
 特に、「たゆたう」という言葉選びが絶妙で、こんなに綺麗な柔らかい言葉のある国に生まれたことが幸せだと思うし、まるで、「たゆたう」という言葉の使い方の例文になってもおかしくないくらいに、素晴らしいお歌だと思いました。