本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日の100人の短歌・第4グループ⑦砂狐さん

 砂狐さんは、Twitterではほぼリツイートばかりされていて、あまり自分のことを語らないのでミステリアスな印象です。大変失礼なのですが、実は、未だに私は砂狐さんが男性なのか女性なのか知らなかったりします。
 そんな砂狐さんのうたの日のお歌は、胸の奥をギュッと掴まれるようなしみじみといいなあと思うお歌が多くて、同じお部屋になった時にはハートも♪もけっこう贈っているように思います。
 だから、今回のお歌も、作者のことはあまりよく知らないけれど、純粋にこのお歌が好きだ!と思うお歌です。


夕暮れの通り道沿いあの家のピアノはちょっと上手になった/砂狐 2019年2月21日お題「ピアノ」


 個人的なことだけど、このお歌を読んですぐ頭に浮かんだのは私の弟のことでした。弟は、4歳からピアノを習い始めて、音楽の道に進むことを決意して、実家を出るまでずっと毎日欠かさず、長い時は8時間くらいピアノを弾く生活をしていました。防音設備もない、木造の借家で。でも、ご近所からはただの1度も苦情はなく、本当に恵まれていたと思います。
 誰でも最初は初心者なので、いきなり両手で曲が弾けてしまうような天才はいませんし、指の運動の基礎として弾くハノンやバイエルやツェルニーの練習曲は、聞いていて心地好いものではありません。中には、騒音に聞こえる人もいるでしょう。
 でも、このお歌の主体は、とても温かく通り道沿いにあるあの家のピアノを練習する人のことを見守っています。ちょっと上手になったということは、まだまだ初心者なのでしょう。
 また、時間帯として夕方にしたのもベストだと思いました。おそらく、学校から帰ってきてピアノの練習をしているのでしょう。これが朝や夜なら近所迷惑になってしまうかもしれないから。 
 子供の教育や文化や芸術というものは、各家庭やそれを教える師匠だけでは限界があって、多くの人の協力がないと育ってゆかないものだと思います。このお歌の主体のような人たちが見えないところで支えてくれていることで子供の才能が開花してゆくんだろうなと思えてなりませんし、私自身も主体のような大人でありたいとも思いました。