本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

第1回 ベストヒットおとの日♪・4 →☆(みぎほし)さん

4 →☆(みぎほし)さん

誰かの染みになりたい人生です 忘れられるのが怖いのです/→☆
  2022年2月8日・お題「染み」

 全体的には31音なんですけど、句またがりだらけのお歌で、本来なら声に出すととても読みにくいはずなのですが、内容がめちゃめちゃ良くて、読む方が朗読の仕方を工夫して読めばこんなにいいお歌はない!と思えるほど一目見て大好きなお歌でした。

 「愛の反対は憎しみではない。無関心だ」と言ったのはマザー・テレサだと言われていますが、このお歌からは、主体が自分への無関心をとても怖れていることが伝わってきます。

 「誰かの染みになりたい」という願望ですが、染みという言葉にはどちらかというとネガティブなイメージがあって、染みができたら普通は染み抜きしたいと思うものなんです。染み抜きしてもどうしても抜けない頑固な染みのついた衣類は、よほど愛着のあるものを除いては、処分する人が多いのではないかと思います。それでも、主体は誰かの染みになりたいというのです。相手にとって、主体との想い出が染みのような嫌なものだったとしても。

 主体がいちばん怖れているのは「忘れられる」ことであり、すぐに忘れられてしまうような人畜無害な人物として人と接するよりも、憎まれてしまってもいいから、染み抜きしても残るような頑固な染みのように、忘れたくても忘れられないような人になりたいと願っているのではないでしょうか。

 たぶん、器用に人間関係を築くことができなくて、自己評価も低めの主体に、温かいお茶でも淹れて、大丈夫だよと伝えてあげたくなりました。