本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日の100人の短歌・第6グループ⑧ひぞのゆうこさん

 ひぞのゆうこさんから、私の歌もお願いしてもいいですか?と連絡があった時には、とても嬉しかったです。
 ひぞのゆうこさんとは、うたの日ではほんの少ししかご一緒したことがないけれど、私の大好きな歌友さんが尊敬する歌人としてひぞのゆうこさんのお名前を挙げていらっしゃったから、記憶に残っていたのです。ひぞのさんは、未来に所属されていたので、当時の月詠がブログで読めたりするんですが、胸の奥がじーんとするお歌をたくさん作っていらっしゃいます。
 うたの日のお歌で、いちばん好きなのはこちらのお歌です。


水色の手紙は今も引き出しの奥で雨音奏で続ける/ひぞのゆうこ 2016年7月13日お題「手紙」


 このお歌は、とても想像の広がるお歌で、読者によっても、いろいろな解釈があるのではないかと思います。
 まず、水色の手紙を主体に書いた人は誰なのか。ここでは明かされていないのだけど、引き出しの奥にずっとしまってあるくらいだから、大切な人からのものだということはわかります。
 四句から結句にかけて、この手紙が雨音を奏で続けていることもわかります。
 以上のことから、私は、ふたつの解釈をしました。
 ひとつは、このお歌はとても幸せな恋のお歌であるという解釈です。雨は、ASKAさんの『はじまりはいつも雨』や小泉今日子さんの『優しい雨』などの中では、ふたりの恋のはじまりを演出するものとして、ロマンティックに歌われていました。ひぞのさんのお歌でもそうだとすると、この手紙は、主体が好きな人からもらったラブレターなのではないかと思うのです。雨の日にもらった手紙だから、この手紙のことを思うとき、主体の心の中でも、弾むようなリズムの雨音が鳴るのではないかと。
 もうひとつは、失恋のお歌という解釈です。主体が恋人から最後にもらった手紙こそ、この水色の手紙で、主体は、号泣してしまったのではないでしょうか。雨も実際の雨というより、この水色の手紙から連想するものが雨であり、自分の涙を雨に例えたものかなと思います。だけど、この手紙を捨てることはまだ主体にはできなくて、主体の心の中ではずっと雨が降り続いているという哀しいお歌なのではないかと。
 1首のお歌で、これだけ想像が広がるというのは本当にすごいことだと思います。