本気子の部屋

短歌、回文、日常を綴ります。

うたの日・お題「懐」

海よりも深い懐だったのに君に出逢って芽生えた嫉妬

 私は、たぶん、子供の頃から完璧に何でもできる弟といつも比べられていたけど、努力をしてもそれが必ず報われるとは限らないし、元々すごい才能のある人が努力もするととてもではないけど追いつけないということがわかっていて、諦めの良いタイプだったせいか、嫉妬というものをしたことがなかった。それは、嫉妬したって仕方ないし、どうにもならないから時間の無駄でもあるからだ。
 私の恋人だった人は、とても年上の女性に可愛がられるタイプで、よく、以前の職場の女性の先輩方の飲み会に、男性は彼だけが招かれたりすることもあったんだけど、それを聞いても私はぜんぜん妬かなかったし、むしろ、そんなに女性に人気がある彼のことを誇りに思っていた。そんな人が、こんな私のことを好きになってくれたというだけで充分だった。
 恋愛中はずっとそんな感じだったのに、今、片想いをしている人の言動には、何回も妬いた。これは、私にとっては意外な発見で、ああ、私にも、人並みに、嫉妬の感情があったんだなあ、と、嬉しくなった。
 嫉妬は、とても醜いし、苦しいけど、歌にすることができるから、今、このタイミングで、嫉妬がどういうものか体験できたのは運命だったのかもしれないと思ったのだった。